2013年01月09日

『無人島に生きる十六人』(須川邦彦)

無人島が好きということもあってか、事実に基づいた漂流記が好きです。
いったいこれまでどれほどたくさんの方々が漂流し、
命からがら絶海の孤島にたどり着き、ぎりぎりの生活をしながら、
何年、あるいは何十年の望郷の思いを胸に抱きつつ、
願い叶わず死んでいったことか‥‥。
失礼しました。今日はそういう話は書かないのです。

というわけで、ここでは、しゃれこうべだらけの吉村昭の『漂流』や、
読むからに寒いシャクルトンの『エンデュアランス号漂流記』(全員帰還したけどね)
は漂流記の名作とわかっていてもその辺にうっちゃっておいて、
この本をご紹介します。楽しく読めるからです。
読めば元気になること、請け合いだからです。

読んで楽しい理由は、16人全員が帰郷できたこともありますが、
それだけではありません。揃いも揃ってみんなが前向きなのです。
いじいじするヒマがあるぐらいなら、みなで取り決めた仕事に汗を流すような、
規律正しい生活をしています。そうして、ついには、みんなで勉強会まではじめて、
おかげで島を出るころには、遭難前には文字も書けなかった人たちも
手紙を書けるようになっていた‥‥というから驚きです。「この年になって、
はじめて、生きがいのある一日一日を、この島で送ることができました。
心が、海のようにひろく、大きく、強くなった気がします」。

持ち前のものがゼロにならないよういかに守り切るか――
を漂流記の本質だと思っていたのですが、限界状況の島で生き残る、とは、
なにか新しい力を積極的にプラスしようとした場合に可能になることのようです。
posted by pilz at 11:14| 京都 ☀| Comment(0) | 好きな本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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