2013年01月25日

『飛鳥へ、そしてまだ見ぬ子へ』(井村和清)

祥伝社のノン・ブックシリーズの一冊として1980年に発売され、その後、
文庫化されたものです。100万部以上を売り上げたかつてのベストセラーであり、
ご存知の方も多いでしょう。

著者は井村和清。医師であり、「飛鳥」と「まだ見ぬ子」の父親でもあります。
病に犯され、死を覚悟し、亡くなるまで井村が書き続けた文章がこの書の主な内容です。
徐々に進行するみずからの病を医師として冷静に見つめ、その一方で、愛する人たち
――両親、妻、子ども、病院の同僚たち‥‥への思いを切々と綴っています。
その思いは、やがて遺されてしまう者への慈愛に満ちたものです。なかでも、
飛鳥への思いを綴った部分は、父親の子どもへの思いを素直に語ったものとして、
白眉の文章だと思います。

ひねりはありません。特別に名文というわけでもありません。
それでも、読む者の胸を打つ逸品です。この書をもとにして制作された番組のビデオ
(NHK特集「妻へ飛鳥へ そしてまだ見ぬ子へ」)も、発売されているようです。
美しい映像と宇野重吉による朗読が溶け合った見事な作品でした。
もし幸いにして入手可能なら、ご覧いただければと思います。
posted by pilz at 23:26| 京都 ☀| Comment(0) | 好きな本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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