2013年06月04日

太田順一『化外の花』(けがいのはな)

今日紹介するのは写真集です。
いつも一般受けする本は紹介しないのですが、
この写真集は相当に変わっていて、極めつけです。なんせ、
「化外」(法的権力、王権の及ばない地域)というくらいですから、
“アウトロー” だと自己主張している “花の写真集” なのです。
ただし、甘ったれた軟弱なアウトローではありません。
骨太のアウトローなのです。

あんまり売れそうもない写真集(失礼!)ですが、
ぼくがたまらなく惹かれるのは、この写真集がぼくの偏見を
完膚なきまでに打ちのめしたからです。
ぼくにとっては、殺風景とは、ひとに見捨てられた、
それゆえに可能性のない場所であり、生命感のない場所です。
写真集の主たる舞台は大阪湾岸埋立地の重工業地帯
(かつて小野十三郎が「葦の原」と呼んだ地域です)の一角。
まさにぼくが殺風景を感じる場所。

太田は、そのような人間に見捨てられた場所でたんたんと
咲き続ける花を撮り、花を通じて、殺風景であることと
生命がないことには関係がなく、人間の統制があるかどうかと
花が咲くことには関係がないこと、いやそればかりか、
歪んだ統制はときに生命にとって重荷になる
場合があることを知らせるのです。

太田にはハンセン病療養所を撮った写真集があります。
かつてハンセン病療養所の人々が置かれた立場と、
重工業地帯の一角に咲く花、そこに「化外」という
共通性を見ているのです。太田は言います。
「自分もまた〈化外の民〉でありたいと願っています。」
posted by pilz at 22:55| 京都 ☀| Comment(0) | 好きな本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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