2013年07月05日

『つみきのいえ』(加藤久仁生 監督)

海底から伸びてわずかに海面から突き出たタケノコの先のような
小さな家に老人がひとり暮らしている。壁には古い写真が掛かり、
老人は床の穴から釣り糸を垂らす。なにも話さない。

そうこうするうちに、ひたひたと床に波が寄せくる。
老人はレンガを積みはじめる。やがて古い家は水に沈んで魚の住処に。
老人は、古い家の上に積み上げられた新しい家の床穴から海を
覗き込む。はじめて家族をもったときの小さな家が海底に残っている。
彼はこうして家を積み上げ続けてきたのだ。

ひたひたと忍び寄って現在を過去へと引きずり込む波は時の象徴。
海中の過去は老人の記憶。海底から積み重ねられた“つみきのいえ"
は彼自身なのだ。彼の記憶のなかで、いや、彼自身のなかで、
彼の一部となった最愛のひとは待っている。ぼんやりとした
ヴェール越しにしか大切なひとに会えないことに切なさはつのる。
だが、その切なさが「切り離されることはない」の意味であれば、
その意味をしみじみ味わいながら暮らしていくこともできるのだろう、
と信じてみたい(が、どう考えても無理だ)。

(この作品は絵本にもなっていますが、DVDの紹介です。
この作品は、ナレーション抜きでご覧になることをおすすめします。)
posted by pilz at 23:23| 京都 ☁| Comment(0) | 好きな本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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